中小企業にお得なMicrosoft 365 Business Premium ― 2026年7月の価格改定で広がった、セキュリティ対策込みの「お得」な理由
「セキュリティ対策を強化したいのは分かっているけれど、専用の対策ソフトやサービスをあれこれ追加していくと、費用も管理の手間もかさんでしまう」――従業員200〜300名規模で、情報システム担当者が1〜2名という体制の中小企業では、こうした悩みを抱えている方が少なくないのではないでしょうか。
実は、多くの会社がすでに導入している「Microsoft 365」を、上位プランの「Business Premium」に切り替えるだけで、こうした悩みのかなりの部分を解決できる可能性があります。しかも2026年7月に行われた価格改定によって、Business Premiumは「お得」の度合いがさらに高まりました。この記事では、Business Premiumがどのようなプランなのか、他のプランと何が違うのか、そして価格改定によって何が変わったのかを整理します。
1. Microsoft 365には3つのプランがある
Microsoft 365の法人向けプランには、主に「Business Basic」「Business Standard」「Business Premium」の3種類があります。まずは、この3つがどう違うのかを押さえておきましょう(2026年7月の価格改定後、1ユーザーあたりの月額・年間契約時・税抜)。
- Business Basic(月額 ¥1,049):Word・Excel・PowerPointなどのデスクトップ版アプリは含まれず、Web版やモバイル版での利用が中心です。セキュリティ面は「迷惑メールやマルウェアの自動フィルタリング」程度にとどまります。
- Business Standard(月額 ¥2,098):デスクトップ版のOfficeアプリが使えるようになり、業務用途としてはこちらを選ぶ会社が多いプランです。セキュリティ面では、危険なリンクをクリックした際に警告する「URLクリック時の保護」が加わりますが、対策としては限定的です。
- Business Premium(月額 ¥3,298):Standardの内容に加えて、後述する本格的なセキュリティ機能一式が標準で組み込まれています。最大300ユーザーまで契約できるため、従業員200〜300名規模の中小企業にとっては、ちょうど収まりの良い上限とも言えます。
こうして並べてみると、BasicからStandardへの違いは「使えるアプリの違い」が中心である一方、StandardからPremiumへの違いは「セキュリティ対策の本気度の違い」であることが見えてきます。多くの中小企業がコストを優先してBasicやStandardを選んでいますが、実はそこに、取引先から狙われやすい「セキュリティの隙間」が生まれている可能性があります。
2. 2026年7月の価格改定で、何が変わったのか
Microsoftは2026年7月1日付けで、法人向けMicrosoft 365プランの価格改定を実施しました。ここで注目したいのが、プランによって値上げ幅にはっきりとした差がついたという点です。
米ドル建ての定価(1ユーザーあたり月額、年間契約時)で見ると、Business Basicは6ドルから7ドルへ(約17%の値上げ)、Business Standardは12.50ドルから14ドルへ(約12%の値上げ)と、いずれも上昇しました。ところがBusiness Premiumだけは22ドルのまま据え置かれ、値上げの対象から外れています。
これは、円建ての価格にもそのまま反映されています。Basicは月額¥1,049、Standardは月額¥2,098へと引き上げられた一方、Premiumは月額¥3,298のまま変わっていません。つまり、Standardの値上げによって、StandardとPremiumの価格差は、以前よりも縮まったことになります。もともと本格的なセキュリティ対策が欲しくてPremiumへのアップグレードを検討していた会社にとっては、以前より小さな追加負担で導入できる状況になった、ということです。
さらに今回の改定では、価格面の変更だけでなく、フィッシングやマルウェア対策の強化、生成AIチャット機能の一部標準搭載など、各プラン共通のセキュリティ・機能面の底上げも行われています。値上げの話題ばかりが目立ちますが、Premiumを選ぶ会社にとっては「同じ値段で中身がさらに充実した」という、見逃せない変化でもあります。
3. Business Premiumに標準で含まれる、5つのセキュリティ機能
Business Premiumが「お得」だと言える最大の理由は、単体で契約すると決して安くない各種セキュリティ機能が、追加費用なしで最初から組み込まれている点にあります。主なものを5つに整理します。
①Microsoft Defender for Business(デバイスの保護)は、パソコンやスマートフォンをランサムウェアやマルウェアから守る、AIを活用したエンドポイント保護機能です。脅威を自動的に検出・分析し、多くの場合は人手を介さずに自動で対処してくれるほか、ソフトウェアの脆弱性(セキュリティ上の弱点)を洗い出し、優先順位をつけて教えてくれます。Windows・Mac・iOS・Androidの複数プラットフォームに対応しています。
②Microsoft Defender for Office 365(メールの保護)は、フィッシングメールや、添付ファイル・リンク経由のランサムウェアといった、メールを起点とする攻撃から社内を守る機能です。取引先を装った偽メールなど、人の注意力だけに頼った防御には限界があるため、こうした仕組みによる自動的なフィルタリングが重要になります。
③Microsoft Intune Plan 1(デバイスの管理)は、社員が使う複数のパソコンやスマートフォンを一元的に管理できる機能です。紛失・盗難時に遠隔でデータを消去したり、会社の管理下にないアプリのインストールを制限したりできます。テレワークや私物端末の業務利用が増えている今、デバイス管理の重要性は増す一方です。
④Microsoft Purview(情報の保護)は、社内の機密情報がうっかり外部に流出することを防ぐ「データ損失防止(DLP)」機能と、重要な情報を自動的に見分けて分類・保護する「情報保護」機能をまとめたものです。個人情報や取引先の機密情報を含むファイルを、誤ってメールで社外に送ってしまうといった事故を防ぐ効果が期待できます。
⑤Microsoft Entra ID(IDとアクセスの管理)は、社員のアカウントを守るための仕組みです。パスワードだけに頼らない多要素認証(もう一段階の本人確認)や、「社外からのアクセスには追加の確認を求める」といった条件付きアクセスの設定ができ、アカウントの乗っ取りによる被害を大きく減らすことができます。
これらはいずれも、単体のセキュリティ製品として個別に契約すれば、決して小さくない金額がかかる機能です。実際、Defender for Businessだけを単体のアドオンとして追加する場合でも、1ユーザーあたり月額¥449程度かかります。私が特に注視するのは、Microsoft Entra IDとMicrosoft Intuneが利用できる点です。大企業の場合は認証系システムは別途しっかりとしたものが導入済みですが、中小企業の場合は難しいケースもあります。Microsoft Entra IDもActive Directoryとの併用にて更なる利便性向上に繋がりますが、Active Directoryを導入できない企業様でも、Microsoft Entra IDというクラウド版の認証システムを利用できるのは助かります。さらに、Microsoft Intuneにてセキュリティポリシーの設定もできます。ここら辺の仕組みは中小企業にとって特筆すべき機能なのではと思っています。
4. セキュリティ制度への対応にもつながる
近年は、取引先から「御社のセキュリティ対策は十分ですか」と確認される場面が増えています。経済産業省が2026年度末の運用開始を目指している「SCS評価制度」でも、多要素認証の導入、全端末へのウイルス対策ソフト導入、ログの保管と監視、バックアップからの復元手順の整備といった項目が、対応の柱として求められています(詳しくは、当ブログの別記事「経産省『SCS評価制度』とは?」をご参照ください)。
Business Premiumが標準で備えている多要素認証(Entra ID)、エンドポイント保護(Defender for Business)、メール対策(Defender for Office 365)、情報の分類・保護(Purview)といった機能は、こうした対外的な要求事項の多くと重なります。もちろんBusiness Premiumを導入しただけで、あらゆる評価制度や認証にそのまま対応できるわけではありませんが、対策の「土台」を整えるという意味では、非常に相性の良い選択肢だと言えます。
5. 情シスが少人数でも運用できるのか
高機能なセキュリティ対策と聞くと、「導入や運用に専門知識を持った人員が何人も必要なのでは」と身構えてしまう方もいるかもしれません。この点、Business Premiumの管理画面は、複数の専門製品をバラバラに使う場合に比べて一元化されており、あらかじめ用意された標準的なセキュリティポリシーをそのまま適用するだけでも、一定水準の対策をすぐに開始できるよう作られています。
とはいえ、初期設定や、自社の業務内容に合わせたポリシーの調整、導入後の運用・監視には、相応の作業が発生することも事実です。情シス担当者が1〜2名という体制であれば、Microsoft 365の導入・運用支援を行っている外部のIT支援会社に、初期設定や運用の一部を依頼するという選択肢も検討する価値があります。
6. 導入を検討する際に確認しておきたいこと
Business Premiumへの切り替えを検討する際は、次の点をあらかじめ確認しておくとスムーズです。
まず、全社員を一律でPremiumにする必要はないという点です。既存のライセンス体系にPremiumを組み合わせ、経営層や機密情報にアクセスする部署だけを先行してアップグレードする、という段階的な導入も可能です。すでにCopilotなどのアドオンを個別に契約している場合は、Premiumへの切り替えによって重複契約になっていないかも、あわせて確認しておきましょう。
また、正式な移行決定前には、実際の管理画面の使い勝手や、自社の業務環境との相性を確かめておくことをおすすめします。特にIntuneによるデバイス管理は、社内で使われている端末の種類やOSのバージョンによって設定内容が変わってくるため、事前の確認が導入後のつまずきを防ぐポイントになります。
まとめ
2026年7月の価格改定によって、Microsoft 365 Business BasicとBusiness Standardは値上げされた一方、Business Premiumは価格据え置きのまま機能が拡充され、StandardとPremiumの価格差は以前より縮まりました。Business Premiumには、Defender for Business、Defender for Office 365、Intune、Purview、Entra IDといった、単体で契約すれば相応の費用がかかるセキュリティ機能一式が標準で組み込まれており、取引先から求められるセキュリティ水準への対応にもつながります。
情シス担当者が少人数の中小企業にとって、複数のセキュリティ製品を個別に選定・契約・運用していくのは大きな負担です。すでに使っているMicrosoft 365を軸に、Business Premiumへの切り替えという形で対策をまとめて底上げできることは、コストの面でも、運用の手間という面でも、大きなメリットになるはずです。まずは自社が扱っている情報の重要度や、取引先から求められているセキュリティ水準を確認したうえで、段階的な導入を検討してみてはいかがでしょうか。
